研究題目:
非利き手の書字行為における 運動解析に関する研究
A Study on human movement analysis in handwriting of non-dominant hand
研究者:
高島孝太朗(Kotaro Takashima)
研究の概要:
本研究の目標は,非利き手の書字行為におけるリハビリテーションに対し,有用な 情報を提供することである.本研究ではそのために,書字行為の解析手法の提案, 非利き手書字行為における特徴の発見,学習方法の検討と評価,の点に関して研究を 行った.
交通事故や半身麻痺などによって利き手が使えなくなった場合,非利き手で日常生 活が送れるよう,リハビリテーションに取り組む必要が出てくる.このような事態に 対してリハビリテーションの現場で行われている利き手交換と呼ばれるリハビリテー ションプログラムの中で,難易度が高いとされ,かつ必要性も高いとされる書字行為 に着目した.
最初に書字行為の評価方法を検討した.本研究では評価方法として,利用が簡便で あり,被験者負担が少ないと考えられる加速度センサデバイスを用いることとする.自 作した加速度センサデバイスを(1)ペン後端(2)手首(3)前腕の合計三つの部位に装 着する.これは「自由度の問題」に関する先行研究を参考にしたためである.この状 態で予備実験を行ったところ,加速度情報として,各部位が一試行内にて傾きを変化 させているかどうかが判断できることが分かった.また,ペン後端に取り付けた加速 度センサデバイスによりペンが回転しているかどうかの情報が波形として得られるこ とも分かった.
次に,書字行為における特徴を発見するために,リハビリテーションの現場で用い られている平仮名の要素記号を描画するときの各部位の動きを観察した.その結果, (1)運動方向の切り換えの問題(2)ポインティングの問題の点が特に重要であることが 分かった.(1)に関しては非利き手では運動方向の切り換えが困難であることが分かった. また,(2)に関してはポインティングは,(a)位置決めと(b)角度調整の問題が 含まれていることが分かった.また,被験者が角度調整を行っていることが波形情報 から分かった. 最後に,上述の二つの特徴的な問題を克服すべく新たな学習補助の方法として,そ れぞれ一つの記号を取り上げ検討した.複数の候補の中から,(1)運動方向の切り換え の問題には分節化の操作を,(2)ポインティングの問題には中継地点の設置を提案した. これら二つの提案方式の有効性を実験により確かめた. 以上で述べた三つのプロセスにおいて,リハビリテーションへの貢献という目的の ための足がかりを作ることができたと考えられる.
Abstract:
発表論文:
- 高島孝太朗,安村通晃,仰木裕嗣, 加速度センサを用いた非利き手書字行為における上肢動作の解析, 情報処理学会 第66回全国大会, (March, 2004).